ジャマイカ:3 「強盗に遭って死にそうになる:後編」
排気ガスで濁ったキングストンの街中で、神様みたいなリアルラスタマンに逢う。
強盗に遭った翌日、朝一番に飛行機の予約をする。警察へ行く。
そして居候させてもらったりして親しくなった人達にサヨナラの挨拶して廻る。
お世話になりました。ありがとう。また、いつか。
帰り際、お腹がすいたので、ドラムカンを縦半分に切って横に倒して、網をのせて、
炭火で焼く路上チキン屋でチキンの丸焼きが焼き上がるのを座り込んで待つ。
流れる煙が目にしみて、ポロリと涙が出る。
続いて、ポロポロと数滴こぼれ落ちる。
ずっと我慢してたけど、何だか今更涙が出てきちゃったよ。
でも強盗なんて大した事無い。
こんな事位じゃ、負けない。負けない。
泣いちゃダメだ。泣いちゃダメだ。
歯をくいしばって、堪える。
「泣くほどお腹がすいてるのかい?」チキン屋のお兄ちゃん。
ラスタカラーの服に、ガンジャがモチーフのペンダントトップ。
ラスタ帽子の下にドレッドが汚れないように大事にしまい込まれてる。
「昨日、強盗に遭っちゃってね。でもジャマイカ、ステキな国だよ。
良い人も沢山いたよ。愛してるよ。」なんて答える。
イヤな想いをしたね。もう大丈夫なのか。そうか。
キングストンにはいつ来たんだ。いつ帰るんだ。ジャマイカはどうだ。
レゲエは好きか。ボブマーリィは知っているか。ラスタをどう思うか。
なんて受け答えをしているウチに、
いつしか、ラスタスピリットの話になる。
まず「JUSTISE」は「JUST PEACE」なんだ。
そして「ONE LOVE」。
キリストもブッダもアラーも全部全部違うけど、でもヒトツなんだ。
ジャマイカ人も、日本人も、そしてインディアンもアメリカ人も、他の国の人達も、
バラバラだけど、全部全部、ヒトツなんだ。
例えばキミにも家族や友達はいるだろう?みんな仲良しだろう?
本当は世界全てが仲良しなんだ。
キミも、そうだと思うだろう?
スゲエなぐさめられ方。ハナシ、デケえよ。強盗と話が遠過ぎるよ。
でも、とりあえずは受け入れてくれる場所と受け取って良いんだね。
泣いても良い場所なんだね。
強盗ね、怖かったよ。凄く凄く怖かったんだよ。
でもね、1人旅だから1人でそういうのも乗り越えなきゃいけないと思ったんだ。
誰にも頼らずに、1人で。
だからこそ絶対に泣いちゃいけないと思ったんだ。絶対に泣いちゃいけないと思ったんだ。
でも、でもね、でもね、やっぱりね、人間は、1人では、生きられないね。
あのね、本当はね、本当はね、もう旅終わろう。日本に帰ろう。とか思うほど、
凄く凄く、怖かったんだ。
そうだよね。みんな仲良しなんだよね。なんてしゃっくりをあげながら、答える。
小さく、泣く。
もくもく白い煙が膝を抱えてる姿を隠してくれるよ。
そして、熱々でカリカリのチキンが焼きあがる頃には、濡れた頬も乾いていたよ。
親指が天をさすようにコブシをつくってお互いのコブシの背をぶつけて
そのまま親指同士をまたぶつけて「リスペクト!」なんて言って
ジャマイカ人が日常的に良くやる挨拶をする。
コブシを胸にささげる。
「今度はいつ、ジャマイカに来るんだ?」と聞かれて、
「SOON COME!」なんて、答える。
(パトワ語(ジャマイカ語)で「すぐにね。」「また、いつか。」の意味。)
約束の無い、約束をして、手をふって、別れる。
また、いつか。
ビルとビルの隙間の長い長い道路の遠くに山が見える。
その山には中腹までいつもいつも大きな雲がすっぽりとまるっきり乗っかっている。
バスの窓からそんな風景を見ながら、また、少し、泣く。
でっぷり太った気の良さそうなおばちゃんに、フリルのついたハンカチを差し出される。
ありがとう。
強盗に逢ったりもしたけど、ジャマイカ、良い人ばっかりです。大好きです。
本当にまた、いつか。
また、いつか。
旅は時々、凄く大事な事を教えてくれる神様みたいな人に逢わせてくれます。
そういう人に逢う為に、旅をしているのかなぁ。とも、思います。
旅は、続きます。
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